2017年産
募集馬近況レポート vol2

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 残雪の隙間から小さな新芽が顔をのぞかせ、母仔を乗せた馬運車が西へ東へと忙しそうに行き交う。厳しい寒さを乗り越え、遅ればせながら春の足音が近づいてきた北海道・浦河町。ビクトリーホースランチで育成中の明け2歳馬たちは一段と逞しさが増し、数か月後のデビューへ向けて、いよいよペースアップの時期を迎えていた。

「個々で多少メニューの違いはありますが、12月からBTCの坂路に入りはじめ、年明けにはハロン15‐15ペースまで上げました。気温が低い1月にはあまり場内では攻められませんから、そこでひと息入れることを逆算して前倒しで進めたかたちです。これは一昨年と同じペース配分、つまり明け4歳世代の育成メニューを念頭に置いたもの。気温がだいぶ暖かくなってきましたので、来週あたり(3月第1週)から再度ペースを上げていく予定です」(荻野豊代表)

 この日の1鞍目はタイキワンダラス(タイキエイワンの17年産、♂)、タイキザモーメント(タイキグラミーの17年産、♂)、タイキスピネル(マロノヴィーナスの17年産、♂)。2鞍目はタイキラッシュ(グッドイヴニングの17年産、♂)、タイキルークス(タイキキララの17年産、♂)、タイキグロワール(フロレティナの17年産、♂)。3鞍目はルリアンヴェール(アッシュベリーの17年産、♀)、モーニングデュー(タイキソレイユの17年産、♀)、デルニエエトワール(タイキトゥインクルの17年産、♀)。坂路入りする日は場内の周回コースで軽く体をほぐしてからBTCへ移動するのだが、どの馬も馬運車を前にしても嫌がることなく、スイスイと慣れた様子で乗っていった。各3頭を積み終えて出発するまで、じつに1分足らず。中には大アクビをしながら乗り込む強者もいた。こうした日々でONとOFFを学び、繰り返し刻まれる『馬運車に乗って移動する=思い切り走ることができる』、という記憶。この先、東西トレセンと競馬場を行ったり来たりする競走馬にとって、馬運車に乗ることが当たり前であることは大きなアドバンテージになる。厳冬期を乗り越え、ここまで順調に成長し、育成が進んでいる募集馬9頭たち。ここからは1頭ずつ、荻野代表の言葉とともにリポートしていく。

タイキエイワンの17年産

「タイキワンダラス」。その体全体を包み込むしなやかな筋肉。パワータイプ優勢の坂路調教においてはそれほど目立つ走りを見せないが、首の使い方が軽やかで、心地よいリズム感。ハミをぐっと噛んで前を追う姿に気持ちの強さが見てとれる。

「スピルバーグ産駒ですから、最初から筋肉モリモリの体型は期待していませんし、もうひと段階、ふた段階と成長をしていく中で、この血統配合から期待する理想の体型になってくれることでしょう。タイキエイワンの子は手先が軽く、行く気が強い。この子は芝で走らせたいと思っていますし、マイル前後で活躍してほしいと願っています」

 半兄タイキメサイア(4歳、父ハードスパン)はダート1600mでデビューして3着。使いながら行く気が出て、3戦目の1400mで初勝利を挙げた。500万下に昇級後も上位を争っているが、最近は抑えるのに苦労するシーンがしばしば見られるようになってきた。

「父は違いますが、そうした傾向はこの子にもあると見ています。だから、最初は芝のマイル前後を目指していきますが、その先、もしもビュンビュン行くようなタイプになったのなら、1200m、1400mでもかまわない。大事なことはこの子の特性を伸ばすことができるレース選択をすること。タイミングを逃さずに結果を出すことが一番だと考えています」

 一見すると線の細い体型に映るが、腰からお尻、トモの筋肉量は十分なもの。騎乗者を乗せてふいに立ち上がっても上体はブレるところがなく、細マッチョな体の奥底には相当なスタミナが隠されているようだ。

「今はフィギュアスケーターのようなイメージ。でもデビューする頃には見るからに筋肉の張りつめた競泳選手のようになっているでしょう。来週には各馬さらにペースアップを予定していますが、この馬ならヘコたれることなくスイスイと軽く上がってきますよ。この夏、競馬場での再会を楽しみに待っていてください」

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タイキグラミーの17年産

「想像を遥かに超えた動きを見せてくれている」  そう驚きを伝える荻野代表の視線の先にいたのはタイキグラミーの17年産こと「タイキザモーメント」。12月に本場のコースで乗っている時はまだ体を持て余しているような、とくに目立つ動きは見せていなかったのだが、坂路を一直線に駆け上がってくる姿はまさに別馬のよう。無駄な動きは一切せずに、ただまっすぐに前だけを目指して加速してくるのだった。

「この時期にここまで良い動きを見せるようになってくれるとは正直、思っていませんでした。動きがTheダイナミック。背も伸びてきましたし、こちらが思う以上に成長してくれていますね。それでいて重厚感はなくなっていない。母はスピードのある馬でしたから、父から距離を延ばせるスタミナを受け継いでくれれば、それでOK。楽しみでしょうがないですね」

 トモをしっかりと踏み込めているからこそ、前駆を大きく動かすことができる。小回りの馬場では見せることのなかったこの馬本来の動きが、坂路で存分に発揮された格好だ。もともと馬体に恵まれ、成長スピードは同世代の中でも一、二を争うレベル。それでいて動きもスタミナも申し分なしとくれば、話は早い。厩舎から声がかかれば4月でも5月でも、即入厩してデビューに向けてまっしぐらだ。

「ガンガン行きますよ。勝ち気な性格の母の子ですから、その色が濃くなってくれば短距離が適性距離になる可能性はある。しかし、配合からいえばマイルは十分にこなせると思っています。今後は必要以上にイレ込まないように調教を進めていくことですね。そこは注意してやっていきます。思ったとおりの、いや、ひょっとするとそれ以上の結果を出せる馬かもしれませんよ」

 新種牡馬スピルバーグの一番星へ。広々としたターフでもてる能力をフルに発揮してくれることだろう。

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マロノヴィーナスの17年産

「遅いペースの調教時や普段の様子などはまるで気迫を感じず、電池が切れているかのよう。しかし、坂路で速いところを行く日はスイッチが切り替わる。クレバーな馬ですね」

 調教においてONとOFFがハッキリしているのは半兄タイキサターンや全兄タイキウォレスと共通するところ。とくに後者とは完全同配合となるのでイメージを重ねてしまいそうになるが、今のところ調教に対する姿勢を除けば、似ているところはあまりない。 「父の特徴がよく出ているタイキウォレスとは毛色も体型もまるで違う。マロノヴィーナスの17年産の場合は母系の影響が強いのでしょう。この一族がレースに出ているとパドックで注意して見ているのですが、それぞれやはり似た雰囲気がありますよ」

 祖母は最優秀ダートホースのアロンダイトや先日、京都記念を制したダンビュライトを送ったタンザナイト。孫世代からもクリソライト、マリアライト、リアファルと一流馬が続出しており、今や門外不出といわれる名牝系だ。ややダート色の強いダンカークとの配合で生まれた本馬だが、体型を含め、競走馬としての適性は芝優位といえそうだ。

「この子の場合、あまり前々で競馬をしてほしくはない。馬込みの中をそっと回ってきて、最後にビュンと加速して差し切る。芝の2000m前後でこの馬の特徴が生かす競馬をイメージしています。ダートではなく、間違いなく芝。それも柔らかめの芝が合っているでしょうから、そうだ、札幌競馬場なんていいですね」

 ということで、夏の函館入厩、札幌デビューを目指すマロノヴィーナスの17年産こと「タイキスピネル」。馴致の頃から背中の安定感が抜群で、幼少期からここまで馬体のバランスは崩れたことがない。坂路で速い時計を出すようになってもブレのないキャンターができており、今後デビューまでに頓挫するイメージは皆無だ。

「真っ青な空、緑の絨毯が眩しい札幌競馬場で会いましょう!」

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グッドイヴニングの17年産

 この日の♂2鞍目。馬運車から我先にと降りてきたのはグッドイヴニングの17年産こと「タイキラッシュ」。猪突猛進≠願って名付けられたその競走馬名のとおり、走ることが大好きでいつも前向きな本馬。その競走馬に向いた旺盛な気性と風邪ひとつ引いたことがない丈夫な体質が評価されて、一番バッター候補として、これからバンバン調教を進めていくかまえだ。

「母父コマンズに、父メイショウボーラー。パワーにスピードをかけ合わせた配合で、そのイメージをそのまま絵に描いたような馬格の持ち主です。背中から肩、腰にかけての恵まれた筋肉は鍛錬で身につくものではなく、先天的に持って生まれたもの。見た目にもわかりやすく、2歳戦から動けそうな馬体ですからね、気性面も後押しして、迷う必要はありません」

 この日の坂路では少々遊びが見られたが、それは馬体がまだまだ成長過程にあり、今はあえてメニューに余裕をもたせているため。もともと節が太く、骨量豊富。さらにペースを上げていった数週間、数ヵ月先、2歳馬とは思えない大人びた姿になっていることだろう。

「今日も3ハロン45秒を切る時計で上がってきましたが、この調教をコンスタントにこなしていけば無駄な脂がとれてきて、筋肉はさらに盛り上がってきます。自分が動きたいように動ける体になった時、この馬は並みのペースでは収まらないほどのスピードとパワーを見せるようになりますよ。先々ダートもいいけれど、まずは函館の芝でデビュー。これが理想ですね」

 小細工をせず、スピードで勝負。操作性が良く、誰が乗っても力を出せるタイプという見立てから、若手の減量ジョッキーを起用するプランも選択肢に入ってくる。さあ、誰よりも速く、誰よりも前へ。お楽しみはすぐそこに迫っている。

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タイキキララの17年産

 体幹の強さは世代bP。走り頃≠ニいわれる母の3番仔は、生まれながらに馬格に恵まれ、ここまでアクシデントに見舞われることなく、1つの不安もなく成長してきた。「タイキルークス」と名付けられた本馬は、この日も坂路で3ハロン45秒を切るペースで上がってきたが、まだまだ足りないよ、と言わんばかりの迫力。息もすぐに整い、完成度という意味では一歩も二歩も先にいる存在だ。

「この馬に関しては弱さというキーワードとは無縁。現時点で競走馬の完成形に近い骨格になってきている。今日の調教などは軸がしっかりとして、ケチのつけようのない動きでしたからね。このまま早期入厩、早期デビューを目指して進めていきます」

 芝、ダートの適性は今後見極めていくことになりそうだが、活躍が見込まれる舞台は短距離からマイル。早熟で終わらせないためにも、中央2勝の半姉フェリーチェのようにじっくり控えて前に襲いかかるようなレース運びをイメージしている。

「グランプリボスの産駒は意外にも敏感な子が多いとも聞きますが、この子は度胸があって集団で先頭に立っても臆することなく加速していけるタイプ。どんな競馬でもできるでしょうし、決して海千山千のレベルではありませんよ」

 本馬の血統で特徴的なのはHalo4×4のインブリードだろう。過去を紐解いてみると、名牝タイキステラの晩年に後継繁殖として誕生したのが、母タイキキララ(父キングヘイロー)だった。じつはこの段階からサンデーサイレンスの血が3代、4代へ薄まっていく未来を見据えた配合だったのである。

「希望どおりタイキキララが牝馬で生まれてくれて、後継繁殖としての楽しみができました。この母にサンデーサイレンス(※グランプリボスの母父がサンデーサイレンス)の血が入って、どういう競走馬になるのか、というところに注目しています。持って生まれた体格、そしてハートの強さ。確かな成長力。しっかりとチャンスをものにして、この馬で函館2歳S、または札幌2歳Sに行きたいですね」

 10年の歳月をかけた大樹レーシング至極の1頭。さあ、結果はいかに。

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フロレンティナの17年産

 半姉フロレンザールしかり、本馬しかり。

 母フロレンティナは配合種牡馬の特徴をそのまま引き出す繁殖牝馬と評して間違いないだろう。フロレンティナ17こと「タイキグロワール」は、キングカメハメハ×サンデーサイレンスという近代日本競馬の標本のような血統をもつ、トゥザグローリーの初年度産駒にあたる。ブレーキングを始めた頃は低重心でどこかアンバランスさを持ち合わせていたが、調教が進むにつれて体高と幅が出て、今では父のシルエットと瓜二つだ。競走馬らしいシャープさとハードに攻めてもヘコたれないタフな肉体。その存在感は日に日に増している。

「正面から走ってくる写真ではわかりづらいかもしれませんが、横から見たら体がすごく伸びています。以前は脚が短く映り、このままマッチョになるのかな、と思った時期もありましたが、この子は良い意味で裏切ってくれました。厳冬期にこれだけの成長、変化を示すことができたというのは感心します。資質の高さ、母と父の遺伝力の強さでしょうね」

 坂路を駆け上がってくる姿には伸びがあり、体全体からしなやかさが伝わってくる。騎乗スタッフが軽くGOサインを出すと重心を沈めて、さらにペースアップ。それでも軸は一切ブレるところがなく、圧巻のパフォーマンスを見せてくれた。

「速いペースで走らせると顕著にわかるのが、脚の振りのうまさです。回転がスムーズでトビが大きいので、ワンストロークでより前に出ることができる。ゲートを出てポンとリードを取り、あとはリニアモーターカーのようなブレの無い推進力でゴールへ向かうのみですね」

 半姉はデビュー戦5着ながら、スタートしてすぐに1馬身のリードを取るほどの出脚の良さを見せた。瞬間的なスピードを伝える母に、クラシックディスタンスで確かな能力を示した父。両親から受け継いだ才能をもってすれば…ひょっとすると、ひょっとする。

「同じ菊沢厩舎で早期デビュー予定のタイキキララの17年産もいますから、そのあたりをふまえての移動になりますが、4月半ばまでに入厩できるようなら6月の東京開催を視野に入れたいですね。王道の芝マイル。例年役者が揃う舞台ですが、この馬はそこで戦わせたい気持ちを持っています」

 いずれにしても2歳夏のデビューが濃厚。エース候補のお披露目をお楽しみに。

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アッシュベリーの17年産

 リズム良く首を上下させて、軽快なステップ。まるでダンスを踊るようにアッシュベリーの17年産こと「ルリアンヴェール」が坂路を駆け上がってきた。募集馬ラインナップの中で最も小柄な女の子ながら、力の要る坂路においても軸が安定しており、上体のブレは見られない。もっと速く、もっと走りたい、という気持ちが伝わってきて、見る者をワクワクさせてくれる。

「脚の回転が速く、ロスのない走り。併せている馬は470キロを超えるサイズですが、見比べても遜色のない動きを見せています。坂路入りしてトレーニングを強化しても馬体を減らすことなく、むしろ増えている。サイズは小さくても心臓や肺は大きいのでしょう。この馬が秘めているものは相当高いと見ています」

 半姉エヴェリーナは482キロでデビューして新馬勝ち。半兄タイキフェルヴールは現在500キロを超える馬体に成長し、先日ダート4勝目を挙げた。本馬も最近はグンと腰が高くなってきており、母の遺伝子がさらなる成長を促すことは確実だ。父系が違う分、兄姉ほどのサイズにはならずとも、その将来性と素質を見込まれ、全400口はすでに満口となっている。

「皆さまお目が高いですね(笑)。実際、私たちもタイキフェルヴールと同等かそれ以上の活躍を期待しています。現時点でも早期デビュー組と併せて互角以上の動きを見せていますが、この馬に関しては夏頃まで成長を促して、秋デビューを予定。この馬がさらに体力をつけて馬体に幅が出てきた時、ギュンと切れてスパーンと伸びる、スポーツカーのような走りを見せてくれるでしょう」

 走ることはわかっているから、その時がくるまでじっと待つ。運動量と飼い葉のバランスに注意しながら、その都度この馬のベストを維持していくだけだ。

「デビューの地はもちろん、芝。距離はマイルくらいからスタートしていければ。父フリオーソのタイキフェルヴールが1800mで勝っているのだから、先々は距離を延ばしていけるでしょう」

 見据えるのは生涯一度のクラシック。大きな夢を見せてくれそうだ。

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タイキトゥインクルの17年産

 この日の3鞍目、牝馬の併せ馬でもっともパワフルなフォームを見せていたのがタイキトゥインクルの17年産こと「デルニエエトワール」。中央4勝を挙げたクラブゆかりの母タイキトゥインクルのラストクロップにして、出来栄えは歴代トップ3に入る大器だ。

「若いお母さんの子と併せても一番の動き。改めてタイキトゥインクルの繁殖牝馬としての資質の高さを感じています。ダイナミックな走りをしながらも重苦しいところは一切なし。幼い頃からバランスのとれた格好の良い馬でしたが、調教が進むにつれてどんどん垢抜けてきましたね」

 同世代のタイキソレイユの17年産と同じファミリー出身ながら、似ているところはあまりなく、本馬は父ヴィクトワールピサの血を感じさせる体つき。肉厚なトモから繰り出されるフットワークは派手さがあり、大げさでも何でもなく、ドバイワールドカップを制した父のそれを彷彿とさせる。また、ここまでの体の成長とトレーニング内容のバランスがピタリと合致しているのだろう、与えられたメニューをひとつずつクリアして、調教においてモタつく場面を見せたことはただの一度もないという。

「こちらのオーダーに対して、いつも100点の満点回答。次はこれをやろう、その次はあれをやろう、と壁にぶつかることなく進めてこられました。成長しながらもバランスが崩れず、背中の安定感は世代トップクラス。母と父の良いところをしっかりと引き継いでくれています。2000m、2400mを走る競走馬の体になってきていますし、気性的にもクラシックディスタンスを意識できる馬ですね」

 普段は無駄なことを一切せず、乗り手の指示に従順。併せてしっかり燃えるタイプだから終いの伸びや粘りを発揮できそうだ。 「走るフォームが大きいので、広いコースでのびのびと走らせるのが理想。先々を意識すれば東京または阪神の2000mくらいからスタートするのがベストでしょう。夏移動の秋デビュー。これが理想ですね」

最後の星(デルニエエトワール)≠ェ出すのはいつも、どんな時も満点回答。そのレースぶり、期待せずにはいられない。

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タイキソレイユの17年産

 併せたアッシュベリーの17年産、タイキトゥインクルの17年産が行く気満々だったのに対して、タイキソレイユの17年産こと「モーニングデュー」はどこか淡々とマイペースを貫いた。すぐに息が整ったように決してバテているわけではなく、どうやらなんでみんな頑張っているの?≠ニいう疑問型だ。

「今はまだ、みんなが行くから、それなら行ってみましょうか、という感じですね。幼い頃からおっとりしていてキリキリしたところがない馬でしたから、そのイメージそのまま大きくなった感じです。闘争心が足りないのではと心配されるかもしれませんが、母も幼少期や育成の段階ではのんびり屋だったのが、競馬場に行ったら気が入りすぎるほどの馬になりました。先天的にスイッチを持っている馬なので、今は気合が足りないくらいでちょうどいいでしょう」

 母タイキソレイユはデビュー2戦目で初勝利を挙げて準OPまで順調に勝ち上がったものの、4歳以降は気合が入りすぎてレース前に消耗してしまうことが増え、マズルネットと呼ばれる矯正馬具を素着して返し馬を行っていたほどだった。その血を継いでいる限り、どこかでガラリと変貌する可能性は高く、体がしっかりと出来て、レースを覚えるまでは今のままで十分というわけだ。

「性格だけではなく、お尻の大きなシルエットも母にそっくりですからね。走れる体をもって生まれてきています。父エイシンフラッシュの産駒成績はあまり目立ちませんが、新馬勝ちする産駒もいるように、瞬発力さえ受け継いでいれば大丈夫。この子は幼い頃から格好が良く、すべてにおいてバランスのとれた体をしていましたし、資質は高いものがあります」

 成長スピードに合わせてメニューが決められ、ここまでは思い描いていたとおり。今後は移動へ向けて少しずつ少しずつ刺激を増やしていく方針だ。

「中身が出来てくればすぐに移動して、2歳戦から動かしていく予定。デビュー戦はポンとゲートを出て、そろりと周ってきて、終いの脚を生かす競馬をイメージしています」

 レースでスイッチの入れどころを覚えてくれればOK。母の教訓を生かして持てる能力を100%発揮するまでである。

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2017年産
募集馬近況レポート

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 日ごとに白銀の度合いを増していく名峰・日高山脈。氷点下の世界はそこで暮らす生き物たちに豊かな自然と澄んだ空気をもたらしてくれる。2019年、厳冬期を迎えた北海道浦河町・ビクトリーホースランチ。明け2歳を迎えたサラブレッドたちの瞳はどこまでも透き通り、キラキラと輝く未来だけを見つめていた。

「今年の募集馬たちは8月末頃から馴致をスタートして、早い馬だと馴致開始5日目から人を乗せてコースへ出ていました。良い意味でまったく印象に残らないほど、どの子も順調。今年は例年よりも積雪が遅かったこともあり、つい先日まで外周コースを使って長めを丹念に乗り込むことができましたからね。距離でいえば、1日1800m〜2000m。昨年よりも負荷をかけるペースは早くなっています。もともと基礎体力の高い世代ですが、さらに逞しさが増して、それぞれが自信をつけてきているな、と感じます」(ビクトリーホースランチ代表・荻野豊)

 数年前から放牧地の改良に着手し、当歳〜繁殖牝馬まですべての繋養馬の給餌内容を見直すなど大胆な方針転換を行ってきた同場。また、ハード面だけではなく、ソフトも充実させるべく、生産・育成を手がける現場スタッフの意識改革も進めてきた。 「もちろん、まだまだ上を目指していくべき段階ですが、少しずつ結果として表れてきました。クラブとして一番のファンサービスは出資馬の勝利ですからね。そこへ向けて、できることはすべてやっていこう、ということです」

 土が変われば牧草の栄養素も変わる。母が健康であれば胎児はスクスクと育ち、誕生後には良質なミルクをたっぷりと与えることができる。放牧地のデザインは大きく、ゆとりのある広さに変え、個々の運動量も格段に増えた。そうした改革と努力の積み重ねにより、希望は確信に変わり、揺るぎのない自信へ。2017年生まれのタイキレーシング募集馬ラインナップは現在9頭。ここからはデビューを目指して日々トレーニングに邁進している若駒たちをファームドクター・服巻茂之氏の短評を交えながら紹介しよう。(※文中「」内コメントはすべて荻野豊代表、『』内コメントはすべて服巻ドクター)


※募集各馬は、昨年12月からBTC(軽種馬育成調教センター)で坂路調教をスタートしており、今回の第1弾に加え、2月末更新予定のリポート第2弾では本格的なトレーニングに移行した各馬の成長ぶり、具体的なプランニングについてお伝えしていく。

グッドイヴニングの17年産

 bP グッドイヴニングの17(♂、4月1日生まれ、父メイショウボーラー、母の父コマンズ、美浦・高木登厩舎予定)は、幼い頃から元気ハツラツなやんちゃ坊主≠セった。母の初仔ながら馬格に恵まれ、パワフルで自信満々。その見栄えの良さは、母の種付けに帯同した際、同業者に血統を訊ねられたほどだ。離乳後は放牧地で同世代を追いかけ回し、たとえ逃げられても諦めない。これでもか、としつこいくらいに追うものだから、放牧地から帰ってくると、その体はいつも小傷だらけであった。しかし、そんな豪快な見た目とは裏腹に脚の運びはいつもしなやかで繊細だった。

「顔や姿かたち、キャンターの動きなどは母そっくり。でも、ガンガン攻めていくような性格は父メイショウボーラー譲りでしょうね。トレーニングに移行してからも前向きさは変わらず、気持ちがどんどん乗ってきます。持って生まれたスピードがありますし、早期デビューを可能にする体質の強さもある。1月、2月には速い時計をバンバン出して、4〜5月に入厩、6月デビューのプランを考えています」

 幼少期の豊富な運動量がタフな馬体を作りあげ、母から受け継いだしなやかな筋肉が動きに躍動を与えている。現状メニューのゆったりとしたキャンター運動でも一段上の存在感。服巻ドクターの評も『胴回りがしっかりとしており、ボリューム感が凄くある。胸深い肩とトモの大きな好馬体』と、可能性を予見している。

「距離はマイル位までかもしれない。デビューの地はこの馬の適性を生かす舞台になるでしょう。ひょっとしたら、ひょっとするよ」
スタッフ泣かせのやんちゃ坊主≠ヘ、いつしか同世代を引っ張るリーダー的な存在へ。2019年春、一番バッターを務めるのはこの馬かもしれない。

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タイキエイワンの17年産

 bQ タイキエイワンの17(♂、3月22日生まれ、父スピルバーグ、母の父フサイチコンコルド、栗東・大久保龍志厩舎予定)は、同場で一、二といわれるほど気の強い母に見守られて、好き嫌いのハッキリとした唯我独尊タイプ(?)のサラブレッドに成長した。芝で3勝を挙げた母は元来、気性の激しい面があり、放牧地においては向かうところ敵なし。そんな母を見て育つのだから、弱気な子に育つはずもなく、歴代の産駒に共通するのは「大の負けず嫌い」。集団の中で迷わずトップを狙いにいくボスキャラ血統だ。

「母は気が強いだけではなく、賢くて利発。この子の場合も集団の悪ふざけに巻き込まれることなく、少し離れた場所から傍観しているようなところがありましたね。自分が遊びたくないタイミングで他の子に近寄ってこられると威嚇して追い払うこともしょっちゅう。いつも無敵でした(笑)。この母系で大人しい馬は走りませんからね、うるさいくらいで丁度いいでしょう」

 気持ちの強さに負けないくらい体幹が強く、生まれた時から四肢のバランスが良かったという本馬。誕生して間もなく1トライでスッと立ち上がることができたというエピソードも資質の高さを物語っている。服巻ドクターの評はずばり『頭が軽く、胴伸びが目立つ。トップラインのキレイな馬』。現状は抜群の運動神経をもつ中性的な男子のイメージも「春先には無骨さが出て、水泳選手のようになる」(荻野)というのがこの母系をずっと見てきたプロの見立てだ。

 父はディープインパクトの血をもつ種牡馬の中でもとくに馬格に恵まれ、華やかな血統背景をもつスピルバーグ。2014年の天皇賞・秋、勝利の瞬間を競馬場で見つめた荻野代表はその走りと姿に惚れ込み、「種牡馬入りしたら必ず配合しよう」と心に決めたという。そして、供用初年度の相手として選んだのが、走り頃の3番子≠宿す予定となっていたタイキエイワン。もちろん誰でも良かったわけではなく、「母系がスピードを伝えてくれることはわかっていたので、長い距離を走り抜けられることを意識した」というのが配合の決め手だ。クラブゆかりの血統馬の最高傑作を求めた結果が、本馬だったのである。

 生まれ持った好バランスはこれまで一度も崩れたことがなく、キャンターの動きは馴致直後からTheスピーディ。BTC調教に入って速い時計を出すようになれば、さらに伸びのあるフットワークを見せてくれることだろう。

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タイキキララの17年産

 bR タイキキララの17(♂、2月28日生まれ、父グランプリボス、母の父キングヘイロー、美浦・菊沢隆徳厩舎予定)は骨量があり、体全体に重厚な筋肉をまとったグッドルッキングホースだ。一見するとパワー型のように映るが、キャンターの動きはしなやかで脚の運びも柔らか。

「首をぐっと下げて、いつも前向きさが伝わってくる走り。幼い頃から走ることが大好きで、いつも仲間を誘っては放牧地を駆け回っていた子ですから、そのイメージのまま大人になった感じですね。見てのとおり脚の節が太く、しっかりと大地を踏み込めるのが強みです。それに、バランスの良さ、可動域の広さ。動かせば動かすほどアピールポイントが出てきます」

 母系のスピードを生かしてスペシャリストを送るべく、配合相手として選ばれたのがサクラバクシンオー直子のグランプリボスだった。早期デビューを可能にさせる完成度の高さと体質の強さは産駒に共通するところで、本馬も例に漏れない。

「節の太さ、見事な骨量。トレーニングに移動してからも風邪ひとつない丈夫な馬です。故障のこ≠フ字もない馬ですからね、バンバン行きますよ」ということで、目指すは初夏の競馬。前出のグッドイヴニング17同様、先発隊として4〜5月には入厩して一番星を狙っていく構えだ。服巻ドクターも『背中からトモのトップラインのシルエットが良く、素晴らしい馬体。脚長で胸深く、肩が大きく、品がある』と絶賛の素材。その行く末には一見の価値がありそうだ。

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タイキグラミーの17年産

 bSタイキグラミー17(♂、3月16日生まれ、父スピルバーグ、母の父フレンチデピュティ、栗東・西園正都厩舎予定)は、前出のタイキエイワン17の近親で、同じくスピルバーグの供用初年度産駒。類似点の多い同系配合となったが、母同士の性格があまり似ていないせいか、強気一辺倒のタイキエイワン17とは違い、本馬は同世代の中でものんびり屋≠ニして育ってきた。性格は真逆といってもいいほどだったが、互いの根底に流れる血が共鳴したのだろうか、同世代を蹴散らしながら育ったタイキエイワン17が珍しく気を許し、遊び相手として認めたのが本馬であった。

「2頭とも3月生まれで放牧のタイミングや離乳時期がほぼ同じだったこともあるのでしょうね。治療などでどちらかの放牧時間が遅れると、鳴いて互いに呼び合うこともありました」

2頭で過ごす時間が長くなるにつれて、もともとのんびり屋≠セったはずのタイキグラミー17にも徐々に強気な一面が見られるようになる。それが母系の血によるものか、それともスピルバーグの血が影響したものかは判別不可能だが、母の2番仔として誕生した本馬の素材に関しては服巻ドクターが『キリッとした力強さがあり、かなり伸びのあるキレイな好馬体』と太鼓判を押してくれている。

 フレンチデピュティ×ディープインパクトの相性の良さは言わずもがな。それに、母系はミスタープロスペクターのクロスで成功例が多く、この2つの要素を兼ね備えていたのがスピルバーグだったのである。

「同じ父の産駒でもタイキエイワン17とはタイプが違って、こちらの方がフレンチデピュティ寄りの体型。トレーニングを進めていって、どれだけ手先が軽くなってくるかを見ています。ここまでは思い描いたとおりの曲線で成長してきてくれていますし、曾祖母リンクスオブゴールドからなる母系には底力がありますからね。そこにスピルバーグの血が加わり、どういう変化、可能性を見せてくれるのか。ワクワクします」

 どの路線を歩むべきか。春を迎えた頃、具体的なプランニングが発表されることになる。

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マロノヴィーナスの17年産

 華麗なるファミリーにまた1頭、キラリと輝く才能が誕生した。bTマロノヴィーナス17(♂、3月14日生まれ、父ダンカーク、母の父タニノギムレット、美浦・伊藤圭三厩舎予定)は、近親にマリアライト(16年最優秀4歳以上牝馬)やアロンダイト(06年最優秀ダートホース)を擁する超一流の血統背景をもち、今や門外不出の血ともいわれている。父は13年北米リーディングサイアーのダンカークで、16年生まれの兄タイキウォレスとは完全同配合となった。

「当場では通常、同じ種牡馬を2年連続で配合することはないので例外的なケースです。兄タイキウォレスは生まれた時からバランスが良く、躯体がしっかりした子でダンカークの特徴が良く出ていました。本馬の場合は見た目から母系の影響を感じさせますし、サンデー系らしい動きの柔らかさ、素軽さがあります。そこにダンカークらしい骨太さも兼ね備えている。母と父の特徴がとても良いバランスで出ていると思います」

 これまで何かとお騒がせな(?)お産が多かった母マロノヴィーナスだが、本馬を産んだ時は見守ったスタッフが拍子抜けするほどの安産だった。生まれた仔馬は膝下が長く、バランスの良いキレイな男の子。放牧地ではいつ見てもタイキキララ17と2頭で駆け回っており、どちらかといえば悪ガキタイプ≠ナもあった。服巻ドクターの評『首が太くて力強い。胴長で品のある好馬体』は育った環境と血統の相乗効果によるものだろう。

「体力があり余っている感じで、いつまでも走っているような子供時代でした。その頃からしっかりと鍛えられたのでしょうね、安定感のある背中やフットワークの力強さは一朝一夕で出来るものではありません。動きに関しては言うことなし。固すぎず、柔らかすぎない体操選手のようなしなやかな筋肉は持って生まれた才能。羽ばたきますよ」

 もっと速く、力いっぱい駆け抜ける日を夢見て。雪融けの春が待ち遠しいマロノヴィーナス17であった。

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アッシュベリーの17年産

 王道を目指す先に待つものは。bUアッシュベリー17(♀、5月27日生まれ、父キズナ、母の父Any Given Saturday、栗東・牧浦充徳厩舎予定)は、この血脈では久しぶりにサンデーサイレンス系との配合となった。スタミナ豊富で産駒にパワーを伝える母に日本ダービー馬キズナを配して、スピードと瞬発力をプラス。母の4番仔は四肢のバランスに優れ、生後30分も経たずに立ち上がった元気印の女の子だ。

「1歳の春頃までオスもメスも一緒に放牧しているのですが、この子の運動量は体力のあるオスと比べても同等かそれ以上でした。心臓がめちゃくちゃ強い。遅生まれを感じさせないスタミナを持っていますよ。兄タイキフェルヴール(3勝)もそうですが、この血統に共通するのは一見すると頼りなげにも見えるトモやお尻のかたち。しかし、これが成長して力をつけると、大きなパワーの源となるのです」

他の同世代と比べると体のサイズはまだまだコンパクトだが、10月から11月までの1ヵ月で体重は11キロ増。直近の服巻ドクターの評でも『首つきが良くなり、キ甲が伸びて大きくなった。頭は軽く、脚長で胴回りボリュームある馬体』と確かな成長力を伝えている。

「この子は兄姉のイメージではなく、ディープインパクト産駒の牝馬として見るとしっくりきます。全体のフォルムやバランスはまさにそれです。だから、この先も極端に大きなサイズにはなりませんし、ならなくていい。現状メニューでも動かせばキレッキレ。さらに成長し、力をつけた先には大きな舞台が待っているでしょう」

 じつは本馬、すでに秋デビューからクラシックを目指していくプランが内定済み。焦らず、じっくりとエネルギーを溜め込んで、来るべき時に爆発させるのみだ。

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タイキソレイユの17年産

 「父と母の遺伝子を受け継いだ、標本のような馬。気が良く、動き抜群。気になるところは何もありません」

 荻野代表の目線の先にいたのはbVタイキソレイユの17(♀、4月8日生まれ、父エイシンフラッシュ、母の父フジキセキ、栗東・高野友和厩舎予定)。縦列トレーニングの中団で全身を弾ませて、前へ、前へ。スパンッ、スパンッと後方に飛び散る砂粒の量が本馬の蹴りの強さを証明している。OP級の能力を秘め、JRAで3勝した母が送る2番仔は、その漆黒の馬体からただならぬオーラを放っていた。

「初仔のイルフェソレイユは母父フジキセキの影響を感じる体型でしたが、この子の場合はエイシンフラッシュ寄りの屈強なボディ。動きの素軽さやマイペースな性格は姉と共通するところです。母は現役時代から繊細で気難しい面をもっていましたが、この子は人に対して従順で素直。人懐っこいのでスタッフとの距離が近く、アイドル的な存在でした」

 母譲りの美形で、周囲の変化に動じないどっしりとした内面の持ち主。幼い頃、放牧地で同世代がバタバタと暴れていても、知らん顔でやり過ごしただけのことはある。ただ、筋肉が浮き上がって黒光りしている馬体はアイドルのイメージとは真逆なのだけれど……。

「トレーニングを積むにつれてトモ幅が出て、♂顔負けのボリュームが出てきましたからね。可愛らしさは格好良さに変わりました。馬混みを苦にせず、蹴散らして抜け出してくるだけのスタミナとパワーを持っていますよ」

 母系にサンデーサイレンス系の血が入っているため、スピード因子の遺伝は間違いのないところ。スタミナと日本の馬場への適性を考慮して選ばれた父エイシンフラッシュの血が、本馬の体内で覚醒しはじめたところだ。成長に伴い、服巻ドクターの評も『バランスが良く、大きくフックラと肉付き◎。群れの中で強い。胴回りしっかりしてトモが大きい』と上昇一途。「何も心配ない」。その一語に尽きるタイキソレイユ17なのであった。

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タイキトゥインクルの17年産

 前出のタイキソレイユ17にとっては叔母にあたる同世代、それがbWタイキトゥインクルの17(♀、4月3日生まれ、父ヴィクトワールピサ、母の父リアルシャダイ、栗東・大竹正博厩舎)である。母はJRAで4勝を挙げ、ヒットジャポット(5勝)やタイキソレイユ(3勝)、エイシンフェアリー(2勝)を送った当クラブの看板繁殖牝馬。父にヴィクトワールピサを迎え、母のラストクロップとして誕生したのが本馬だった。

「16年のお産を最後に引退と決めていたので、タイキソレイユ以来となる久々の女の子を生んでくれたことに感謝の気持ちでいっぱいでした。出産も子育ても上手で、本当に頭の良い繁殖牝馬。最後のお産もスタッフは母親のちょっとしたケアを行うだけで、あとはトゥインクルに任せておけば大丈夫でした。本来のお産というのはこういうものだ、と彼女が教えてくれたような気がします」

 17年当時すでに21歳となっていた母は、若い繁殖牝馬たちにも負けない乳量を誇り、絶えず栄養たっぷりのミルクを与えてくれた。厳しくも大切に愛しまれ、仔馬はスクスクと成長。あっという間にオスと見分けがつかないほどの背の高さになり、放牧地を駆け回る日々の中で、基礎体力を高めていった。

「同世代の群れの中でとにかく元気に走っていました。そのわりにはケガをして帰ってくることはなく、手がかからない子でしたね。母から大柄な体型を受け継いで、バランスの良さやルックスは父譲り。大人びていながら早熟感はなく、今後さらにトレーニングが進んでいけば、さらに見栄えのする競走馬になると確信しています」

 服巻ドクターの評『首つきキレイ。前駆が勝っている。伸びのある好馬体。脚長で胸深く、トモが大きい』からも、本馬のアピールポイントが馬体全体に及んでいることがわかる。走っている姿は安定感抜群。名牝の後継としてこの先、長きに渡って大きな夢を見せてくれそうだ。

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フロレンティナの17年産

 注目の追加募集となったbXフロレンティナの17(♂、2月20日生まれ、父トゥザグローリー、母の父クロフネ、美浦・菊沢隆徳厩舎予定)は、サマーセール上場予定馬に入っていたが、セリ前日の放牧中にケガを負ってしまったことから欠場。その後の成長課程には何の問題もなかったため、晴れてクラブ募集の運びとなった。このエピソードだけを聞くと心配されるかもしれないが、実際のところセリ欠場の最大の理由は「素材が良いだけに、軽傷のせいでマイナス評価をされるのが嫌だった」から。上場に際して興味を示してくれたオーナーが複数名いたのだが、ベストの状態で送り出せないのならやめよう、という結論だったのである。

「体高があって、幅もある。当歳の頃からどこに出しても恥ずかしくない出来栄えの子でした。もともと母系とキングカメハメハの相性が良く、サンデーサイレンス系の血を併せ持つトゥザグローリーとの配合がハマりましたね。生まれながらに美しい流線型の馬体。幼い頃からしつこいくらいに同世代を追いかけ回していましたので、体力も圧倒的にありますよ」

 じつは本馬、セリ前に菊沢師も興味を示しており、欠場を知った師からすぐに連絡が入り、トントン拍子でクラブ募集&菊沢厩舎所属が決まった経緯がある。同厩舎といえば、母父クロフネと相性抜群。まさに棚からボタ餅のラインナップ入りとなった。

1月現在の馬体重は496キロで、馬格は募集馬の中でも最上位ランク。この馬の成長をずっと見てきた服巻ドクターの評でも『コンディションがかなり良くなった。頭が軽く、目が鋭い。首が太く、胴回りボリュームあり。肩とトモはかなり大きい』と頼もしい言葉が並んだ。馬見のプロたちがこぞって将来性を見込む素材。春を待たずにその片鱗を見せてくれることになりそうだ。

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