2019年産
募集馬近況レポート vol2

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 厳冬期を乗り越え、ゆっくりと春の足音が近づく北海道。年明けからJRA日高育成センター(BTC)での調教をスタートさせた"TEAM TAIKI"の2歳馬たちは、一段と逞しさが増し、心身ともにスケールアップしていた。
「早い組は1月中旬から週に1回坂路入りして各日2本上がっています。初めての坂路調教から15-15を切るペースが出ており、ブレのない走りができています。ここから継続して坂路調教の回数をこなし、ペースアップしていった上で、どの馬を初入厩に備えた名張分場への移動の第1陣に入れるか。成長速度や適正を含めてしっかりと見極めていきたい」(荻野豊代表)
"TEAM TAIKI"2019年産募集馬は追加募集のイータカリーナ19を含む全11頭。ここからは1頭ずつ、荻野代表のコメントを交えながら近況をリポートしていく。

グッドイヴニングの19年産

 「想像を遥かに超える動きを見せてくれた。驚いた」
 坂路入り初日。同じく初登坂だったタイキソレイユの19年産と共にスピードを緩めることなく突進してきたのはグッドイヴニングの19年産だった。3頭併せの真ん中。見るものすべてが初めてのはずだが、脇目をふらずに一直線に駆け抜けて、脚取りはじつに軽やか。この心肺能力の高さは兄タイキラッシュ(2勝)、姉メテオダヴリル(新馬勝ち)にも見られる共通点だが、初回のパフォーマンスとしては群を抜いていた。
「閉所が怖くて早く出口に行きたかったのかもしれないけれど(笑)、それにしても初日でこれだけ動くというのは相当なもの。2本目もケロリとした表情で上がってくるのだから、この仔も心臓が大きいですね。走ることが好きなやんちゃ坊主が、そのまま大きくなったような馬。苦しいと思わせることなく、このまま成長していってくれたらすごい馬になりますよ」
 母の産駒は種牡馬の特徴が強く出る傾向にあり、本馬も見た目はアメリカンペイトリオット寄り。幼い頃からバランスが良く、しなやかな身のこなしは放牧地で目立っていた。育成厩舎に移動後もすこぶる順調で、姉メテオダヴリルの同時期よりも動きの評価は上。年明け早々に満口となったのも納得の逸材だ。
「天候が整わなくて坂路入りのタイミングは遅くなりましたが、調教は休んでいませんし、ここまで順調に成長しています。兄姉たちを見てもずっと成長曲線にいるような血統。デビュー後もゆるやかに大きくなって、一戦ごとに研ぎ澄まされていく。そんなイメージを持っています」
 スピード×パワーの配合で、目指すはダートのスペシャリスト。早期デビューからまずは全日本2歳優駿を目指し、その先にはさらに大きな舞台は待っていることだろう。

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シルヴィーズモードの19年産

「立派なお尻、それにトモ。ずいぶんと良くなってきた」(荻野代表)
 坂路入りするようになって、最も体の変化が大きかったのがシルヴィーズモードの19年産だ。インタビュー時点の馬体重は492キロで、昨年8月と比較するとプラス30キロ超。もともと筋骨隆々の体型ではあったが、トレーニングの継続によって余計な脂が落ちて、早く走るために必要な筋肉のひとつひとつが見事にパンプアップしていた。
「坂路入り以前よりも明らかに体がまとまりだした。走る馬の雰囲気を出すようになってきましたし、こちらが思い描いていた以上の成長を見せてくれています」  坂路入り3日目となったこの日、2本目の登坂では強く仕掛けることなく楽々とハロン14秒台をマーク。トレーニング後はすぐ息が入り、表情にもゆとりがある。思いのままにスピードを出して走ることができる「週に1度のバス旅行」は、シルヴィーズモードの19年産にとってとてもハッピーな時間となっているようだ。
「正面から上がってくる姿にとくに派手さはないけれど、それは余計な動きをしていない証拠です。真っすぐに真面目に走ってきているから一見普通に見えますが、ダート短距離馬らしい力強さと俊敏性が見てとれる。この馬の個性がよく出た、良い走りでした」
 この時期の2歳馬としては申し分のない動きと内容。初仔ながら馬格があり、夏負けしないであろう丈夫さもある。目指す舞台がダート短距離≠ニ定まっていることからも本州移動の第1陣メンバーに入る可能性は高い。
「3回目の坂路でここまでの動きを出来る馬はなかなかいません。配合の狙いどおり、この母系の持ち味であるスピードが強化されており、早期の2歳戦から行けるタイプでしょう。あとはレースに行ってどこまで根性を見せられるか。本州移動後も、馬の調子が良ければいつまでも待つようなことはしません。お披露目の日を楽しみにしていてください」
 爆発力を秘めたファミリーが満を持して送る、短距離路線のエース。今一度、追いかけてみる価値は十分にありそうだ。

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スノーサミットの19年産

 騎乗トレーニングを始めた当初から、同世代たちの一歩先を走ってきた。例年であればその差は徐々に縮まっていくものだが、スノーサミットの19年産の場合は然にあらず。世代全体がレベルアップしていく中でも、今なお別格の存在感とアクション。坂路調教に移行しても評価は変わらなかった。
「1学期の基礎学習を簡単に終わらせて、2、3学期の応用授業もあっさりクリアしてしまうような秀才タイプ。周回コースの動きがいくら良くても坂路であれ?と評価が下がる馬もいますが、この馬は想像以上の走りが出来ています。性格も落ち着いており、肝が据わっている。本物感が漂ってますね」
 限定1年の国内繋養だった希少なザファクター産駒。適性を含めまだまだ未知数なところはあるが、母系との相性が良かったことはここまでの成長過程からも明らかだ。世代の中で頭ひとつ抜けた馬格ながら重さはなく、坂路コースでの動きはしなやかで軽い。芝・ダートどちらに行っても好パフォーマンスを期待できそうだ。
「姉フロストエッジ(1勝)ほど胴は長くなく、最近は父寄りの体型に見える。子出しの良いお母さんで、この子も幼い頃から馬格がありましたが、とくに背中の肉付きが良い。うちの生産馬ではなかなかいなかったタイプですね。現在520キロとすでに立派ですが、まだまだ腰高なのでさらに成長していきそう。幅が出すぎることなく、上に伸びていってくれたらすごい馬になると思います」
 選ばれし秀才に挫折は必要ない。資質が高いことはもうわかっているので、王道を目指すべく始動は秋口。ダートなら1700m、芝なら2000m辺りを狙っていく構えだ。

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タイキキララの19年産

「良い走りだ、文句なし!」
 胸前の筋肉がボリュームアップして、より大人びた体つきに変化してきたのはタイキキララの19年産。前駆と後駆のバランスが良くなったことで脚の運びがスムーズになり、俊敏かつ安定感のある走りが実現した。
「ここ1、2週間でガラッと変わってきた1頭。坂路に行くようになって腹筋回りがギュッと締まって、つくべきところに筋肉がついてきました。もともとキレイな馬ですが、当歳時の頃のようなまとまりのある体が戻ってきましたね。大きすぎず、小さすぎず、ちょうどいいサイズ感。気性も落ち着いてきましたし、馬が自信と活気に溢れていますね」
 1本目は3頭併せの中を走り、2本目は右端。いずれも余計なことは一切せず、真っすぐに頂上を目指して駆け抜けた。ラスト2ハロンは15−15を楽に切るペース。周回コースで連日、長い距離を乗り込んできた成果が、数字とパフォーマンスにハッキリと出ている。
「パワーのある母系ですし、父キズナの影響で芝向きの軽さが出たのは好印象ですね。この馬は秋口くらいに芝のマイル前後でデビューさせたい。ズラリと良血馬が集まる舞台であることは百も承知。順調にいけば、そこで勝負させたいと思っています」
 母タイキキララは初仔フェリーチェ(2勝)、3番子タイキルークス(2勝)とマイナー種牡馬で高アベレージを記録。満を持してキズナを配合した時から、期待値は世代トップクラスだ。曾祖母ロイヤルブライド〜祖母タイキステラ(6勝)と脈々と受け継がれてきた大物出しのファミリーライン。配合と成長過程がうまく噛み合えば大爆発する可能性を大いに秘めている。
「祖母タイキステラのような走りができれば3連勝、4連勝するような馬になるかもしれない。能力が高いことはわかっているので、やっつけることなく、丁寧に階段を上がっていきたいですね。春〜夏を順調に乗り越えることができれば、結果はついてくるでしょう」
 長年愛されてきたチーム・タイキの看板血統。一族の新たな歴史を作るのはこの馬かもしれない。

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タイキソレイユの19年産

 スピードを緩めることなく一直線に駆け上がってきた。フィニッシュラインを通り過ぎて、坂路小屋の壁にぶつかるのではないかと思うほどの猛烈な勢い。坂路入り初日とは思えないアグレッシブさで度肝を抜いたのはタイキソレイユの19年産だ。
「初日からこれだけ動けるのは心臓が強い証拠です。沈み込むようなフォームで、掻き込む力が強く、それでいて身のこなしは軽やか。もともと運動神経のかたまりのような子でしたが、今日の走りで改めて資質の高さを確信できました」
 幼い頃から均整のとれた好馬体の持ち主だった。動かせば快活でパワフル。スピードのある母系に力のあるハービンジャーが絶妙なバランスで融合して、両親の良いところが引き出されている。
「父が替わるとここまで違うのかと驚きました。姉2頭は育成段階からダート向きの印象がありましたが、本馬は芝でキュッと切れ味を発揮できそうなタイプ。性格も全然似ていませんし、先入観をなくして見てもらいたい。この子には芝の王道路線に行ってもらいたいので、きさらぎ賞から皐月賞、NHKマイルカップ。そんな未来も夢ではないかもしれません」
 能力を確信しているからこそ、忙しい競馬になりがちな夏競馬を避けて秋デビューのプランが濃厚だ。芝のマイル前後は大手牧場の良血馬も揃うが、狙うステージが同じなのだから避けて通っても仕方がない。ガチンコ勝負で突き進む構えだ。
「それだけの期待をかけている馬。期待に応えてくれると思います」
 少し先の未来、ターフに響き渡る大歓声。再会の日を心待ちにしたい。

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タイキレボーの19年産

 バネの効いた柔らかな動きと高い俊敏性。周回コースにおいてどの馬よりもリズミカルな動きを見せていたタイキレボーの19年産の坂路評価は、「満点合格」だった。芝向きの軽い走りが身上の本馬。パワータイプ優勢の坂路トレーニングではまだそれほど迫力を出せていないが、持ち味の軽やかな脚さばきは健在。とくに前脚はスパンッ、スパンッとここでもキレイに伸びていた。
「併せた相手はどちらもパワフルな走法でしたから、見た目の派手さでは負けるかもしれません。しかし、地に足をつけてしっかりと動けていますし、楽々とついて行けているので十分。この先、こなした坂路の本数が増えていけば、もっと膝を上げた走りができるようになるでしょう。1ヵ月もすれば別馬のような動きになっているかもしれません」
 これまで攻めたら攻めた分だけしっかりと変化を見せてきてくれた本馬。幼い頃から特徴的だった丸いお尻は全体にボリュームアップして、最近は父ビッグアーサーの面影がちらつくようになってきた。
「やりがいのある馬ですね。変わり身が大きいですし、この先どんな成長を遂げていくのか。適性を含めてしっかりと見ていきたい1頭です。2歳戦向きのスピードがあるので早い時期から競馬を経験させてあげたい。キャリアを積んで、やっていく中での変化もあるでしょう。こういう馬は楽しみですよ」
 昨年夏から騎乗トレーニングを開始して、ここまで体調を崩したことは一度もない。ほぼ休まずに乗り込まれており、使い減りしないタフさを証明している。
「間違いなく早い時期から動けるタイプ」ということで、すでに本州への移動第1陣の筆頭候補。見逃すわけにはいかないだろう。

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フロレンティナの19年産

 リフレッシュ期間を経て、この日が初めての坂路入りとなったフロレンティナの19年産。初めてのBTCへの馬運車移動をスイスイこなし、到着後もリラックスした様子で騎乗スタッフの指示を待った。馴致からここまで充実した時間を過ごしてきてからこそ、余計なことは一切しない。こうした日々の小さな積み重ねが、今後の競走生活において大きな助けとなるのだろう。
「普段はお世辞にも大人しいとは言えないタイプなんですが、跨ると意外と素直な性格。今年はどの馬も落ち着いていて、一度もトラブルなく全馬BTCデビューできました。昨年以上に負荷のかかる周回コースでしっかりと乗り込んでいますので、坂路でも初日からこちらがビックリするほど良い動きができており、頼もしい限りです」
 フロレンティナの19年産も1本目からエンジン全開。クビを使ってリズム良く走り、併せた2頭に無理なくついていった。2本目は前2頭のペースが上がった分だけ苦しくなったが、それでも初日としては及第点の走り。休み明けでこれだけ動ければ十分だ。
「まだまだトモの緩さがある中でしっかりと動けていたのは安心材料。2回目以降はもっと体全体を使った動きができるでしょう。フレームが大きいですし、血統的にゆっくりと成長するタイプなので、ここからの変化がポイント。やる時はやって、休む時はしっかりと休ませて、成長を促していきます」
 負荷のかかるトレーニングでお腹周りが引き締まり、徐々に競走馬らしい体型になってきたところ。これからの伸びしろは大きいものがある。
「早熟なスピード馬と比べると物足りなく映るかもしれませんが、馬っぷりの良さ、潜在能力は一段上のレベルです。これから動ける筋肉がさらについてくるでしょうし、秋には評価が逆転している可能性も高いでしょう。父ラニはUAEダービーを勝ち、ベルモンドS3着という底力のある種牡馬。素質、血統からも世界を目指していきたい1頭。大きな夢を見せてほしいですね」
 取材日から約2週間後のBTC坂路コース。そこには見違えるほどの迫力で登坂してくるフロレンティナの19年産の姿があった。少しずつベールを脱ぎ始めた大器。大舞台に立つ日もそう遠くはなさそうだ。

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マロノヴィーナスの19年産

 前脚を高く上げて、豪快なアクション。強烈なパワーとスピードが大地に伝わり、坂路コース内にはゴォーと地鳴りのような蹄音が響き渡った。ど派手なパフォーマンスで我々を圧倒したのはマロノヴィーナスの19年産だ。
「気持ちのアグレッシブさが全面に出た、良い走りができていますね。馬場をしっかりつかんでいるので、上体がブレませんし、安定している。坂路入り3日目の動きとは思えないですね。ラスト2ハロンの時計は楽々と15−15を切るペース。資質は相当に高いと確信しています」
 現在の馬体重は506キロ。1歳秋からおよそ30キロも増えているが、体全体に筋肉がついたもので、重め感は一切なし。お尻からトモにかけての肉厚で美しいラインは父ホッコータルマエ譲りだ。ここまでバランスを崩すことなく成長しており、母の歴代産駒の中におけるbP評価も頷ける。
「母は少々メリハリに欠ける体型をしていて、上の兄たちにも同じ印象がありました。でも、この子は違う。キングマンボ系のカチッとした面が良い方向に作用しましたね。周回コース同様、坂路でもクッションの効いた走りができており、センスの良さが光る。パワーと切れ味を兼ね備えています」
 血統やアクションからもダート適性の高さは間違いのないところ。前回もお伝えしたとおり、2歳戦から大きなところを狙っていき、さらにその先を目指していく構えだ。
「ダートの中距離で突き抜けた存在になって欲しい。ヒヤシンスSからドバイへ。そう思わせるだけのものをこの馬には感じています」
 ド迫力の馬体と研ぎ澄まされた才。そして、最高のボディコンディション。
見た目通りの活躍を期待させる、そんなオーラを感じた馬だった。

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エヴェリーナの19年産

 3頭併せの真ん中で、坂路のチップを盛大に撒き上げてパワフルな動きを見せたのはエヴェリーナの19年産。正面からでもわかるトモの厚み。胸前の筋肉はこれでもか、と盛り上がっており、明け2歳の牝馬とは思えない逞しさがある。1歳夏の時期と比べて馬体重に大きな変化はないものの、本馬の場合は余分な脂肪が落ちて必要な筋肉がついた結果。より競走馬らしい体に近づいている証拠だ。
「スピード調教を行うことで腹筋が締まって、全体のアウトラインがすっきりしてきました。気持ちが入ってきましたし、ここからまだまだ変わってきそう。もともと体幹が強く、坂路でスピードにのってもブレがありません。メンタル面も安定していて、寡黙に走ってきてくれるのがいいですね。以前はマイル位のイメージを持っていましたが、最近の走りからすると距離はもう少し延びるかもしれない。ダートの王道を駆け抜けていってほしい」
 母の半弟にあたるタイキフェルヴール(5勝)は今年、悔いを残すかたちで引退することになったが、2歳時から頭角を現して重賞級と評された逸材だった。その叔父と同じフリオーソ産駒の同系配合。後を引き継ぐかたちでデビューを迎えるエヴェリーナの19年産が歩むべきはもう決まっている。
「適性はわかっていますので、無駄使いはしません。体力がありますし、早い時期から動けるタイプですが、適距離、適条件で走ることを優先していきます。全日本2歳優駿を目指すなら夏の新潟、札幌、このあたりになるのでは。今のところマイルからおろして徐々に距離を延ばしていくイメージをもっています」
 幼少期から具体的なプランをもって育成され、積み重ねてきた時間は裏切らない。ボディコンディションは常にトップクラスの評価であり、同時期のタイキフェルヴールよりも高い完成度を誇る。だからこそ、妥協は一切しない。この道をただまっすぐに突き進むのみだ。

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タイキエイワンの19年産

 もっと速く、前へ、前へ。
この日の2鞍目。3頭併せでひときわアグレッシブな動きを見せたのはタイキエイワンの19年産だった。首を上手に使って、前脚がよく伸びる伸びる。ハミをギュッと噛んで、一心に頂上を目指す姿はまさにスピードの申し子だ。まだまだ余力を残しながらも、ラスト2ハロンは軽く15−15を切るペース。これで坂路入りはまだ3回目なのだから、ワクワクさせてくれる。
「スイッチが入ったら、もう止まらない。母系、父の特徴が良く出ていて、資質は高いものがあります。スピードがありすぎるくらいなので、レースに行ったら折り合いが課題になるのかもしれませんが、兄姉たちがそうだったように無理に抑えようとすると気持ちが途切れてしまう。好位につけるだけのスピードはあるので、気分良く行ってそのまま押し切るようなイメージですね」
 幼い頃から走ることが大好きだった。この母系としては大人しい性格ながら、トレーニングの場面においては負けん気の強さを前面に出してくる。手先の軽さは一族に共通するところ。クッション性の高いバネの効いた走りを支えているのは、体全体を包み込むしなやかな筋肉だ。
「今年のラインナップの中では小柄な方ですが、よく食べて、しっかりと運動できているので数字以上に逞しく見えますね。坂路に行くようになってから首差しなども太くなってきましたし、今時期は牡馬の方が競走馬らしい体つきになるのが早く、牝馬はこれからフワッと変わってくる。そこを上手にクリアしていければ大丈夫でしょう」
 坂路に行かない日は周回コースで約3600mを乗り込んでおり、基礎体力アップに余念がない。チップの入れ替えでよりタフになった馬場を苦にすることなく、軽い脚どりでスイスイと進むのだから頼もしい限りだ。
「このまま順調に進めていくことができれば、早期デビューが可能。まずは新馬戦をクリアして、夏にひと息入れることができればベストです」
 同世代を圧倒する一段上のスピードでチームの一番星を狙っていくつもりだ。

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イータカリーナの19年産

  出会いは2020年北海道市場オータムセールの会場。事前にピックアップしていた数頭の中には入っていなかったが、展示の時に「ずいぶんと歩きのキレイな馬がいるな」(荻野代表)と目に止まったのがイータカリーナの19年産だった。血統を確認すると4代母にノーザンダンサーの母Natalmaの名前が刻まれており、母の半弟はシンザン記念勝ちのアントニオバローズ。性別も予算も当初予定と違っていたが、購入を決めるだけのインパクトがあった。
「セリ場で馬も良く見せました。ひと声では落ちませんでしたが、良い出会いだったと思います。これまでセリ馴致などで多くの経験をしてきたのでしょう、人間を信頼していて、性格がとてもいい。大事にされて、良い環境で育ってきたことがわかります」
 物覚えが早く、馴致から騎乗調教を始めるまで至ってスムーズだった。度胸があり、初めての事柄や環境にも動じることはまったくなかった。動かせば心臓が強く、スタミナも豊富。騎乗トレーニング開始が11月だったというのに、8月から乗っている同世代と同じ距離を同じペースでこなすのだから、運動能力は相当だ。
「真面目すぎるくらい前向きで、良いスピードを持っています。背が高く、骨格もしっかりしているので、まだまだ大きくなるでしょうね。レースに行っても牝馬同士ならまず当たり負けしない、そんなタイプでしょう。動くし、覚えも早いのでガンガン行きたくなりますが、資質が高いことはわかっているので、慌てることなくデビューは夏後半〜秋。最初は芝でおろしてみるのも選択肢として想定しています」
 取材当日は3回目の坂路入り。慣れた様子で馬運車から降りてくると、すぐに目線を坂路コースがある方向へ向けた。騎乗スタッフが背中に跨ると、迷うことなく歩き出し、行き先はもうわかっている、と言わんばかりにグイグイと進んでいく。
「余計なことはしませんし、頭の良い馬。普段は大人しくてかわいい馬ですが、走り出すとカッとするところがあるので、レースで燃え尽きてしまうことがないように、慎重に進めていきます。競走馬としての期待はもちろん、繁殖としての未来もある馬。大事に育てていきたいですね」
 2本目の坂路調教で一段ギアが上がっても脚さばきは軽いまま。真っすぐに前を目指して、余裕たっぷりに15−15を切ってきた。気温や馬場状態に左右されることなく、常に高いパフォーマンスを見せられるのは確かな能力の証。世界に通じる名血が、TEAM TAIKIにまた新しい風を吹かせてくれそうだ。

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 以上で2019年産募集馬の近況レポートは終わりとなる。また来年、新たな若駒たちの芽吹く様を楽しみにしながら、今回のレポートにあたって様々な成長を見せてくれた19年産世代の活躍を祈っている。

2019年産
募集馬近況レポート vol1

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 氷の結晶が舞い降り、柔らかな光のベールに包まれた初冬の朝。
若駒たちは軽くステップを踏むように馬場に入ってくると、鞍上の指示に従ってゆっくりと体をほぐし始めた。走る気満々で早く、早く、と急かす子もいれば、できればのんびりと草を食べていたいマイペースな子もいる。2019年生まれのTEAM TAIKI≠ヘ注目新種牡馬の産駒を含む11頭(※追加募集のイータカリーナ19は2021年2月に紹介予定)。今年も多士済々、個性豊かなラインナップとなった。今年も2回に分けてその成長過程をお届けしていく予定だ。1回目の今回は大樹ファーム・荻野豊代表が語る各馬の今後のプランと、少し先の未来の話を交えつつ、近況をリポートしていく。

グッドイヴニングの19年産

 骨太でボリュームたっぷりの好馬体。見た目どおりのパワフルな動きは、馴致から間もない1歳馬とは思えぬド迫力だ。よほど蹴り上げる力が強いのだろう、一完歩ごとにウッドチップが後方上に舞い上がり、周回を重ねるごとにその高さは増していった。
「肉厚なトモから繰り出される力のある動き。今はまだ全体にドタバタしていますが、兄タイキラッシュもこの時期はこんな感じの走りをしていましたから、よく似ていますね。大型でもしなやかにシュッシュと動けるのはこの血統の共通点。イメージどおりに成長してきています」
 母系は国内外でGTホースを送る世界レベルの名血。スピードに特化した血をより引き出すべく、選ばれたのが新種牡馬アメリカンペイトリオットだった。誕生時の姿は父のシルエットによく似ており、誰もが認めるグッドルッキングホース。幼い頃は標準サイズで推移したものの、やはり血は裏切らない。1歳春頃からグングンと大きくなり、かつてはサイズで負けていた同世代を抜き去る勢いで成長してきた。
「やっぱり大きくなる血統なのだな、と再認識しました。馴致を始めた頃から急に腰が高くなって、そこからはあっという間。それでも順序立てて成長してきているのでバランスは崩れていませんし、良い感じですね。将来は父によく似た恰好いい馬になっているでしょう」 雄大な馬体とは裏腹に、とても人懐っこく、スタッフみんなに愛されるかわいい性格。人間が大好きだから調教中も鞍上の指示に素直に従って、操作性はばっちりだ。
「スピードとパワーに秀でた血を求めて導入した繁殖牝馬の3番子。期待通りスピードの絶対値が高い産駒を輩出してくれていますが、この子は短距離一辺倒ではないですし、長いところもいける。早期デビューを可能にする基礎体力は十分なものがありますし、2歳戦から活躍できるでしょう。目指せ、全日本2歳優駿!でいきます」
 深いダートも難なくこなす底知れぬパワーとスピードを武器に、まずは世代の頂点へ。その先には世界の舞台が待っているかもしれない。

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シルヴィーズモードの19年産

 血の爆発力を呼び戻せ。
シルヴィーズモードの19年産の配合に関していえば芝の可能性を残すことや、距離延長を目指す意図はまったくなかった。目指したのはただひとつ、短距離ダートに秀でた母系の特性をさらに強化すること。おのずと配合相手に求めたのは砂における圧倒的なスピードと母系の血を覚醒させるエネルギー。18年2月の種牡馬展示会で候補馬をチェックする中、すべての条件を満たしたのが短距離ダートチャンピオンのダノンレジェンドだった。
「力強い歩き、漆黒の馬体から発せられる活力。すべてがエネルギッシュで、この馬でいこう、と即決しました。母は中央では勝てなかったものの、もともと立派な馬体の持ち主で、リンクスオブタイムの後継として考えていた1頭。期待どおりの、良い子が出てきてくれました」
 幼い頃はいつも周囲を巻き込んで駆け回る、いわゆるいたずらっ子≠ナ、よく遊び、よく食べて、よく眠った。栄養をたっぷりと蓄えて、ストレスフリーの毎日を送ってきたから、心身ともに健康そのもの。元来、環境の変化に強く、物怖じしない性格だけに育成厩舎に移動後も次々と課題をクリアした。かつてのガキ大将が、今ではすっかり優等生だ。
「8月には馴致を終えてすぐに馬場で乗り出しました。学習能力が高いですし、人をよく見て素直に従ってくれています。基礎体力が十分にあって、すでに見栄えするボリューム感ですが、血統的に成長スピードはゆっくり。それでも日に日に体が大きくなっていますし、筋肉の盛り上がりが目に見えるようになってきた。来年の今頃には父のようなムチムチボディになっていることでしょう」
 2頭併せで馬場を回っていると、少しでも前に出ようと必死の形相。鼻を大きく膨らませて空気を体内に取り込み、今にも爆発しそうな勢いだ。そう、これこれ。これこそリンクスオブゴールド〜リンクスオブタイムの血だ。
「ご覧の通りです。小細工はせず、遠回りをすることもなく、迷わずダート短距離を目指します。手堅く、間違いのない1頭。父と同じ大舞台に立てるように育てていきます」

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スノーサミットの19年産

 誕生当初から注目の的だった。
 1年限定で国内繋養されたザファクターの希少な産駒であることに加えて、曾祖母はイタリアオークス馬のIvyanna、祖母スノーフレークUは英ナッソーS(GT)2着馬。母スノーサミットを導入後間もなく、おばUpperlineの子で本馬のいとこにあたるWar Secretaryがイタリアのリステッド競走を制したことも、血の評価を押し上げた。
「2017年当時、国内外から母へのオファーがあったのですが、すべてお断りしました。牧場としても期待をかけていますし、クラブの新たな看板として育てていきたい血統。その期待どおり、いや、期待以上の子出しの良さに安堵しました。半姉フロストエッジ(新馬2着、2戦目で勝ち上がり)も立派な体でしたが、この子はさらに雄大で、誕生時60キロで今現在すでに528キロ。一体どこまで大きくなるのやら(笑)。血の底力を含め、楽しみしかないですね」
 幼い頃からバネの効いた俊敏な動きで同世代を圧倒してきたスノーサミットの19年産。血統どおりの成長を見せていく過程で、その動きには重厚さとパワーが兼備された。同世代の中で頭ひとつ抜けた馬格でありながら、走るフォームは意外にも素軽い。鞍上が促すとパッと反応して、大きなストライドであっという間にスピードに乗った。
「祖母スノーフレークUがヨーロッパに残してきた産駒からWar Secretaryが出て、その父はザファクターの父と同じWar Front。母系とDanzigの相性が良いことは間違いありません。体型的に距離はもちそうですし、まずは芝でデビューして、その後ダートも視野に入れて選択肢を広げていくイメージ。来年の秋には競馬場で皆さんにお披露目できるでしょう」
 ここまで育成初期のメニューを順調にクリアして、来年1月早々にBTC坂路で15-15ペースの調教をスタートできる見込み。狙うべきはクラシックか、はたまたダートの絶対王者か。いずれにしてもこの馬に似合うのは大観衆が注目する大きな舞台となるだろう。ダイナミックなフォームで先頭を駆け抜ける姿を想像しながら、その時を待ちたい。

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タイキキララの19年産

 ホップ・ステップ・ジャンプ!
 白い息を吐きながら弾むように入場してきたのは、クラブで長年愛されてきたロイヤルブライド〜タイキステラ一族のニューフェイス。堅実な産駒実績の母と、父の背を追いかけ、トップサイヤーへの階段を登り始めているキズナとの間に誕生したタイキキララの19年産だ。幼い頃から父似の美しいフォルムが特徴的で、ダート色の強かった姉兄とは一線を画す柔らかみと素軽さ。時おり見せるピリリとした気性は走るキズナ産駒に共通するものだ。ここまでの順調な成長過程と相まって、いつしか世代のエース候補として一目置かれるようになっていた。
「タイキキララの産駒の傾向として、本馬も兄姉に倣っておとなしい馬ではありませんが、だからといって手をわずらわせるような事はなく、とても頭の良い馬。初期馴致〜騎乗調教と次々と課題をクリアしてきました。あえて言うと、現状の走りはいたって普通。つまり、目立つほど悪い面も弱い面もなく、すこぶる順調だということです」
 父モンテロッソの姉フェリーチェ、父グランプリボスの兄タイキルークスがそれぞれ2勝。しっかりと結果を出した母に、満を持して配合したキズナ産駒だからこそ、「トラブルなく普通に育ってきたこと」が最高のアピールポイント。今後も「普通に成長していくこと」が何より重要になってくる。
「カタログ写真を撮影した春先と今を比べると体型は大きく変わってきました。首・肩周りやトモを中心に全体的にボリュームが出て、クビの太さなどは段違いに力強さを増しました。正直、当歳時のフォルムからするとここまで屈強な馬体への変化は意外でしたが、競走馬は生まれた時のかたちに戻ると言いますから、ここからさらに変わってくるのでしょう。芝でキレ味を発揮するべく、この軽さを維持したまま成長していってほしいですね」
 早々に2歳戦から始動して、目指すはクラシックの大舞台。大きく羽ばたくその時まで、あくまでも普通≠貫くつもりだ。

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タイキソレイユの19年産

 クッション性能bP。
 体全体が良く伸びて、一完歩ごとにスパンッ! スパンッ!と小気味良いリズムが大地に響き渡った。もっと早く、少しでも前へ。幼い頃から走ることが大好きだったタイキソレイユの19年産は、晴れの日も雪の日も、いつ何時もやる気マックス。健康な体内にはエネルギーがみなぎっている。
「手先の軽さは母の産駒の共通点。スピードのあるサンデーサイレンス系と力のあるハービンジャーは相性が良く、目論見通りこの子もうまくマッチしてくれました。当歳の頃からどこに出しても恥ずかしくない格好の良い馬で、そのイメージのまま成長してくれています」
 誕生して間もなく、牧場サイドが”いの一番”に声をかけたのは当時ディアドラ(日英GT制覇)を管理していた橋田満師だった。すぐに来場した師は本馬をひと目見て「うん、良い馬だね」とふたつ返事で管理を快諾。その後も牧場に何度も足を運び、成長を見守ってくれている。
「私たちとしては当歳時にイメージしていたよりも背が伸びなかったなという印象があったのですが、最近それを先生に言ったら『最初からそんなに大きくなる雰囲気ではなかったよ』とまったく気にしていませんでした(笑)。ハービンジャーの特性をよくわかっている先生ですから、この先もずっと安心してお任せできます」
 8月から乗り出しを開始して、ここまで一度もヘコたれることなく課題をクリア。チップの総入れ替えによって相当にタフになった周回コースを、弾むような軽やかさで疾走している。年明け早々にはBTC坂路コースでさらにペースアップしたメニューをこなしていく予定だ。
「昨シーズンの冬は雪が少なく、この子たちがいた中期育成では夜間放牧をほぼ休まずに行いました。また、育成厩舎に移動後も馴致を行いながらの夜間放牧を試みた初めての世代でもあります。トレーニング→放牧、トレーニング→放牧の繰り返しで、精神的にも肉体的にも相当に強くなっています。BTCの坂路くらいで根をあげることはまずないでしょう」
 母譲りのスピードに父のパワーをプラスして、狙うは芝の王道路線。どんな馬場でも難なくこなすオールマイティーな競走馬を目指していく。

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タイキレボーの19年産

 弾むようなフットワーク、伸びやかな動き。目の前を通り過ぎても振り返ってずっと見ていたくなるほど、美しく気持ちの良いキャンターを披露したのはタイキレボーの19年産だ。鞍上と呼吸を合わせて一定のリズムを刻み、単走だろうが併走だろうが、育成初期の1歳馬とは思えない安定感のある走り。ちょっと、ちょっと待って、この子は一体何者だ?
「脚の回転が良いし、スパン、スパンと芝向きの走り。こちらが驚くほど素晴らしい成長を遂げてくれて、こうした馬の成長を見ると嬉しくなりますね。この子の母、祖母ともに気性が荒く、結果的に短距離でスピードを生かす競馬になりました。それなら、もう距離をもたせようと配合を考えるのはやめよう、と開き直って選んだのが新種牡馬のビッグアーサーでした」
 サクラバクシンオーの後継として期待される父ビッグアーサーは現役時代、既走馬相手のデビュー戦をノーステッキで圧勝すると、そこから無傷の5連勝でOP入り。ケガの影響もあってGTタイトルは高松宮記念のみだが、そこに至るまでの過程を支えたのは圧倒的なポテンシャルと精神力の強さだった。種牡馬入り後はその受胎率の高さと産駒の出来栄えが話題となり、初年度から3年連続で配合頭数100頭オーバー。スピードサイヤーとして大化けする可能性を秘めている。
「ボディライン、脚の運び。この子はビッグアーサーの血が色濃く出ていますね。以前はコロンと映った体型も首差しが抜けてきて、アクションが大きくなってきました。少々馬場が渋っても問題にしない脚力がありますし、札幌・函館の芝1200mでデビューして、ピュッと勝ち上がる。そんなイメージを抱いています。派手さのある血統ではないのでカタログ上では目立たないかもしれませんが、雪景色の中、ゴムまりのように跳ねる鹿毛の馬体が、私には輝いて見えますよ」
 競走馬向きの気性と超絶スピードを支える屈強なボディ。世代の勝ち上がり第1号はひょっとしたらこの馬かもしれない。

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フロレンティナの19年産

 芦毛同士の配合で、2代前まで遡っても7/8が芦毛。当たり前のように芦毛が誕生するものと思い込んでいたスタッフたちは、母のお腹から出てきたフロレンティナの19年産を見て、一様に驚いた。その毛色はどこからどう見ても明るい栗色で、時間が経ったところで芦毛に変化してくるとは思えなかったからだ。血統登録センターに登録する際、たてがみと、血液で改めて調べてもらったところ、やはりというべきか、判定結果はその見た目どおり『栗毛』。この配合で誕生する確率は5%程度というから、産まれた時からラッキーボーイである。
「どこから栗毛の血が飛んできたのか、さっぱりわかりません。3代前の母母父にフレンチデピュティがいますが、この子の毛色はさらに赤味が強くて明るいので、そこからの隔世遺伝とも言い切れず…とにかく不思議な馬です。とはいえ、肩の逞しさ、体高、幅のある馬体はまさにラニ。世界で戦った父のパワーをそのまま受け継いでおり、動かせば圧倒的なスケールを感じます」
 黄金色に輝くたてがみを揺らしながら、力強く大地を蹴り上げる。ペースが上がっても重心がブレることはなく、前駆と後駆がしっかりと連動して噛み合った。1歳馬離れした雄大な馬体は1歳11月時点ですでに502キロ。継続的に行われてきた夜間放牧で基礎体力を増大させ、幼少期からアスリートとして成功するために必要な食べる力≠養ってきた成果が、ここに表れている。当歳の離乳時ですでに母の体高を抜いていたという話も大げさではなさそうだ。
「こういう頑丈な馬をうちで作れたことは自信になります。現状マイナス要素は何もありません。この世代はどの馬も基礎体力に自信ありですが、その中においてもこの子は持っているエネルギーが違いましたからね。この馬体で父ラニですから、芝とは言いません。はっきりとダートです。ヒヤシンスSを勝って、その後は世界へ戦いに行きたい。それくらいの期待をこの馬には持っています」
 ど派手なルックスとけた違いのパワーでライバルたちを蹴散らし、いつの日か父も走ったあの舞台へ。奇跡の栗毛馬がでっかい夢を見せてくれそうだ。

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マロノヴィーナスの19年産

 元祖・黄金配合で復権へ。
 母系はGT、重賞ホースの名前がズラリと並ぶ華麗なる一族。今では門外不出とも言われている名血を継承するのがマロノヴィーナスの19年産だ。母の産駒はタイキサターン(3勝)以来、やや沈黙しているが、血の底力を考えればいつどこで爆発しても不思議なない。19年生まれの本馬は母にとって初めてとなるキングカメハメハ系種牡馬との配合。数えきれないほどの成功例を送ってきた組み合わせで、ついにその時を迎えるか。
「兄姉たちも馬体に品があって良い馬でしたが、レースに行くとスタミナやスピードがもうワンパンチ足りなかった。そこでキングカメハメハ系種牡馬の中でもとくにパワーに秀でたホッコータルマエを選択しました。兄タイキサターンとは違うタイプで、距離はもちそうですし、クッションの良い走り。同系配合のダンビュライトに近いイメージを抱いています。血は裏切りませんね」
 容量が大きく幅のある胸前、首差しの逞しさは父譲り。気品のある顔立ちは母系からくるものだろう。調教が始まればチラッと闘争心を見せるものの、幼い頃からとても賢く、一貫して落ち着いた気性。生まれて間もなく母と帯同した種馬場で、テンション上がりまくりの母を見ながらも、つられることなくじっと静かに見守っていたというから、大物だ。
「馴致、育成の過程においても優等生で、無駄な動きは一切しません。学習能力が高く、順応性も抜群ですから、トレセンや競馬場に行っても困ることはないでしょう。順調に勝ち上がり、ステージが上がっていけば海外遠征も視野に入ってきます」
 少し気の早い話ではあるが、飛行機による輸送もこれだけ落ち着いた気性なら難なくクリアできるはず。高いダート適性を示すようなら、父の無念を晴らすチャンスが巡ってくるかもしれない。
「もしもダートなら夏デビューでプラタナス賞やカトレアS狙い。そこでひと息入れて、ヒヤシンスS。地方交流は使わずにドバイから声がかかるのを待つ、そんなローテができたら理想ですね」
 日本最高峰の血の結晶。少し先の未来には大きな挑戦が待っている。

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エヴェリーナの19年産

 迷うことなく、最初のトライはフリオーソと決めていた。
 直近のチーム・タイキの成功例をなぞるべく、決め打ちの配合で誕生したのがエヴェリーナの19年産だ。母は新馬戦1番人気に応えて初勝利。将来を期待されたが、真面目すぎる気性や鼻出血がネックとなり、陣営の思いとは裏腹に競走馬としての時間は短かった。しかしそんな折、母の弟タイキフェルヴール(5勝)がOPヒヤシンスSで2着。さらにUAEダービー6着とその頭角を表していく。当時、すでに引退が決まっていたエヴェリーナの最初の配合相手としてフリオーソの名前が挙がるのはごく自然な流れだった。
「同系配合の魅力に加えて、子宮を大きく作る必要のある1年目に、馬格のあるフリオーソをつけるメリットもありました。生まれてきたのは初仔らしからぬ馬格十分な女の子。育成時代のタイキフェルヴールはひょろひょろと頼りないところがありましたが、デビュー後にどんどん幅が出てガッチリしてきた。本馬は生まれた時からガッチリとしていて、すでに今のフェルヴールの格好に近い。母父ヴィクトワールピサが良い方向に作用したと思います」
 初仔の牝馬ながら1歳11月の時点で馬体重470キロ。母から気性の強い一面を引き継いだが、心配されるようなキリキリとした神経質なものではなく、競走馬に必要な要素という範囲に収まっている。普段から手がかからず、人を困らせたことは一度もなし。馬場に出れば終始アグレッシブな走りで、このままどんどん進めていけそうだ。
「この子は生まれてすぐ、1回目で立ち上がったように持って生まれた体幹の強さがあります。こういう馬はトントン拍子。来年1月中には坂路で15−15ペースも軽くこなすでしょう。繋ぎが固いですし、血統的にも迷わずダート。距離は長い方が良さそうなので、全日本2歳優駿を目指していくのもいいですね」
 タイキフェルヴールの牝馬版、と言われるのも今だけのこと。いつの日かダートの女王として自身の名を日本中に轟かせるつもりだ。

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タイキエイワンの19年産

 私はそっとカメラを構え、彼女の一挙手一投足を見逃さまいとレンズを向けた。ファインダーに収めたタイキエイワンの19年産は、ハミをグッと噛んで一歩一歩確かな蹄跡を残しながら、その表情にはみなぎる闘志を湛えている。産駒に確かなスピードを伝えるリンクスオブゴールドの血が、彼女の体内でパチパチと音を立てて燃えているようだった。
 この日、馬場入りして間もなくは手先だけで走っているようなスタイルだったのが、周回を重ねるごとに四肢の動きが活発になり、体全体を使ったリズミカルな走りに変化。ラスト1週はアクションのたびにチップが天高く舞い上がった。
「見た目以上に体力がありますし、この血統らしく前脚がよく伸びて、センスの良い走り。スピードの絶対値が高いことは間違いなく、切れる脚もありそうです。母、兄姉は気難しいところがネックになりましたので、この子の場合もいかにリラックスして、この血統がもつ才能を引き出せるかがカギ。育成段階はもちろん、入厩してからの管理も大事になってきます」
 本馬の近親で同じくミッキーアイル産駒のブルースコードが、先日デビュー3戦目で初勝利。スピードに特化した母系とディープインパクト後継の中でも短距離〜マイルで強さを発揮したミッキーアイルとの相性は良く、能力どおりなら成功への道は開ける。今回、新鋭の和田勇介師に管理を依頼したのも、この血統への先入観を持つことなく、丁寧にコミュニケーションを取りながら進めていきたいという希望からだった。
「この血統のデビュー戦だからここ、と思い込みで決めるのではなく、見極めが大事。現段階でこの馬自身に対する不安はひとつもありませんし、うまく競馬を選んで、成功させたい馬。だからこそ、この馬を理解して乗ってくれるジョッキー、理解してくれるトレーナーに育ててもらいたい。今のように走ることが大好きなままレースに臨むことができれば、結果はついてくると思っています」
 今までどおりに、この先も真っすぐに前へ進むのみだ。

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 以上で、19年産募集馬10頭のレポート第一弾は終了となる。次回は2021年2月頃の報告となる予定だ。イータカリーナの19年産も含む19年産募集馬、全11頭がBTC坂路コースでの調教を経て、どのように変わってきたのかをお伝えしたいと思う。